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バイオメディカルの有力専門誌JCI insightは6月15日、バイオメディカルや医学に関する米国のR&D支出が伸び悩む一方、中国の予算投入が急増しており、この分野の研究開発力などにおける米国のリーダー的地位が徐々に弱体化しつつある可能性がある、とのレポートを発表した。

↑ 中国バイオメディカル産業のR&D支出が力強い伸びをつづけている。写真はレポート発表の翌週に上海で開かれたバイオメディカル産業展のうち、ラボ用設備の展示ゾーン(LAB World China 2017)。中国のほか、日米欧韓シンガポールなど、各国メーカーが実験設備・機器を出展しており、大勢の来場客でにぎわっていた。写真の機器は、反応釜や超音波細胞破砕機、加熱冷凍サイクル装置などの開発メーカー南京寧凱儀器社のもの

例えば民間分野における07年~12年のR&D支出の年平均増減率は、インフレ率を考慮すると1.9%の微減となっており、同時期のシンガポールや韓国が10~11%の増加、中国が32.8%の急増をつづけていることと対照的だ。

バイオメディカルおよび医学分野における年間のR&D支出額で、中国は2000年には米国(2700億ドル)の12.2%にとどまっていたが、15年には米国(4970億ドル)の75.1%に迫っている。他の研究開発支出額上位国(日本、ドイツ、フランス、英国)がいずれも2000年以降、米国の支出額に対する比率に大きな変化が見られない中で、際立った増加を示している。

↑ 上海智城分析儀器製造社の、精密細胞培養振動器。同社は1998年設立、130件以上の知財を持つ。オーストラリアに設立した全額出資子会社Labwitの商標で国際的に事業展開しており、年間数千台の設備を欧州や東南アジア、南米、南アフリカなど40カ国以上に販売している

↑ 第17回世界製薬原料中国展の会場。2016年実績では20カ国から約2800社が出展、1万人以上のバイヤーと3万人以上の来場者が参加したが、今回も活況を呈しており、中国におけるバイオメディカル産業の成長を印象づけた

資金投入の成果は、学術誌における論文発表数にも表れている。JAMAやLancet、NatureやScienceといった高水準の医学・科学雑誌における研究論文のうち、中国単独の研究チームから発表された論文数は2000年には年間14本と全体の0.4%、国別順位で14位にとどまっていたが、13年以降は年間35本前後と全体の1.4%を占め、国別順位では5位以上に浮上してきた。なお、米国が占める比率は2000年の44.1%から15年の36.9%へと徐々に低下している。米国の比率の低下は、国際チームによる発表の比重が増えたことが起因しているが、中国の研究者が加わった国際チーム論文の発表も、やはり増加基調にある。この傾向は、British Medical JournalやJournal of Cell Scienceといった中水準の医学・科学雑誌においても共通している。

なお、Scopusに登録された1万7000種類の科学・工学雑誌全体に占める中国発と米国発の論文のそれぞれの比率は、03年には中国6.4%に対し米国26.8%だったが、13年には中国18.2%に対し米国18.8%と拮抗しつつある。

同記事は、直近のトレンドがつづけば、バイオメディカル分野における米国の研究開発支出は、2022年には中国に追い越される、とまとめている。

↑ 米国商務省国際貿易局のレポートによると、中国の2015年の医薬品市場は1080億ドルと世界第2の規模で、年間9.1%ペースで成長をつづけ、2020年には1670億ドル市場に達する見通しだ。写真はイメージ、広東省微生物研究所傘下で、微生物検査キットなどの開発を手がける広東環凱微生物科技社の製品

中国ビジネス専門誌、Whenever BizCHINA。この表紙が目印

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